人が暮らしていくうえで、いろいろな「生活習慣」が形成されていきます。たとえば食事の内容や摂り方、普段の買物先や買い方なども習慣化します。一見誰もが同じようなおこないをしているように見えても、人それぞれの個性が出ます。習慣は、長年にわたって身につけた「癖」なのですから。
良き生活習慣と悪しき生活習慣があります。良き生活習慣は人を健康と幸せへと導きます。他方、悪しき生活習慣は「生活習慣病」を招いてしまいます。食性の偏りや乱れ、運動不足による高血圧、脂質異常、肥満症は動脈硬化の原因となり、やがて脳血管の障害を引き起こします。これが認知症につながることはすでによく知られた事実です。
バランスの取れた食事と栄養、適度に身体を動かすこと、生きがいとしての趣味を続けることが認知症予防に有力だとされています。これら予防策のうち、今回の〈「健幸」みちしるべ〉では、シニアライフにおける趣味に焦点を当てて、心身と脳の健康について考えてみることにします。
目次
他人事ではない生活習慣病や認知症のリスク
男女を合わせた日本人の平均寿命は84.3歳(2021年現在)。これは世界でもっとも長い寿命です。また、健康寿命も74.1歳と、これも世界の1位にランクされています(2022年現在)。とても誇らしい数字ですが、認知症は年齢を重ねるほどに発症率が高くなるため、長寿国ゆえに認知症の高齢者が増加する傾向にあります。
65歳以上の約16%が認知症であると推計されています。下記の表によると、70歳を過ぎる頃から5年ごとに見れば認知症の高齢者が倍増することも稀ではありません。2025年には高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。
しかし、裏返せば、認知症と無縁で元気に生き生きと暮らしている高齢者もかなりおられるわけです。そして、そういう人たちには「趣味がある」という共通点があります。趣味は健康の維持やコミュニケーションの活性化につながります。そして、生きがいとして日々を楽しむうちに「認知機能が低下するリスクを下げる効果」があることがわかっています。(参考:国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの調査)
趣味を「しているつもり」と「楽しむ」の違い
80歳、90歳を過ぎても、はつらつと生き、話すことばも明瞭で記憶もしっかりしている高齢者の人がおられます。「秘訣は?」と尋ねると「好きなことをしている」が異口同音の返事。つまり、「趣味を楽しんでいる」とおっしゃっているわけです。
趣味のある人は、趣味のない人よりも認知症のリスクが低いことがわかっています。それゆえ、高齢者には「趣味をもつこと」が奨励されています。政府関係や企業の研究調査部門は高齢者の趣味ランキングやおすすめの趣味を公開して、啓発をおこなっています。さて、ここで趣味のある人が二分されます。
趣味をしているつもりの人
「カラオケや読書やジョギングがいいよ」と他人に勧められるまま漫然とおこなうケースです。こういう人たちは、何をやりたいかがわからず、やらないよりはやるほうが良さそうだという程度の考えで、さほど好きでもないことに時間をつぶしています。これでは趣味が生きがいになっているとは言えません。
趣味を楽しむ人
自分のしたいことがわかっており、楽しそうに思えることに好奇心を向けて取り組むケースです。いろんなことをやってみて、やりがいのある趣味を見つける人です。たとえば一人でする読書や音楽鑑賞、仲間と対戦する将棋、グループで作業するガーデニングや写真撮影や旅行など、多様な趣味にチャレンジします。
身体を動かす、頭を使う、アートを遊ぶ、交流する
A フコク生命の調査
①PC/インターネット
②旅行
③読書
④映画鑑賞
⑤音楽鑑賞
B 総務省統計局の調査
①ガーデニング
②読書
③動画鑑賞
④美術鑑賞
⑤映画鑑賞
Aの調査でパソコン/インターネットと旅行が上位に入り、他方、Bの調査ではガーデニングが1位という結果になりました。AとBの上位5項目に関するかぎり、鑑賞という受け身的な趣味に偏っており、また手を使ったり対戦したり身体を動かしたりする趣味が少ないことに気づきます。
他の調査も踏まえ、人気度や関心度の高い趣味を順位にとらわれずにシャッフルしてみました。ひとまず暫定的に身体(運動・スポーツ・体験など)、頭脳(知的啓発・ゲームなど)、創作(芸術・芸道・文芸・手工芸など)、交流(レクリエーション・鑑賞会・集いなど)という4グループに分類したのが下図です。
趣味を通じて、身体を動かし、頭を使い、アートを遊び、交流できれば理想です。
元気で健やかな日々の暮らしを趣味が支えてくれます。趣味の理想のカタチについ
てさらに考えてみましょう。
趣味を始めたいなら、いきなり「多趣味」がおすすめ
若い時から一つの趣味に打ち込んできた人なら、シニアになってもその「一芸」を貫くだけの集中力と持続力が備わっているでしょう。ところが、趣味と言えるほどの趣味がなかった人や時間つぶしで気まぐれにやってきた人にとっては、一芸的な趣味のハードルは高そうです。
趣味と縁がなかった人が一念発起して何かを始めようと思うなら、パソコンや読書など部屋に閉じこもって自分一人でもできてしまう趣味だけでなく、仲間と一緒にでき、かつ互いに励まし合えるような趣味がおすすめです。その趣味に打ち込みながら、自分のペースで楽しめるもう一つの趣味を持つのはいかがでしょうか?
複数の趣味に時間をかけよう*1
同じ趣味をしていても、1週間当たりの趣味に使う時間が長くなるほど認知症発症が低くなります。さらに、男女を問わず、複数の趣味を持つほうが認知症予防効果が徐々に高まっていきます。多趣味による相乗効果的な知的刺激が得られるためだと考えられます。
【3つの多趣味モデル例】
ダンス
+
読書
+
美術鑑賞
史跡散策
+
インターネット
+
ボランティア
旅行
+
書道
+
コーラス
ガーデニング
+
将棋
+
カラオケ
認知症予防に有効な趣味の例*2
男性ではパソコン・釣り・写真撮影、女性では手工芸・園芸、そして男女ともに身体を動かすグラウンドゴルフや旅行などの趣味を持つ人たちは、していない人に比べて発症リスクが小さいことがわかっています。
旅行は心身両面にとって健康的な行動であり、旅程を考えることや旅先のエピソードを記憶することが脳を活性させます。また、旅をきっかけにして、日常でも外出したり交流したりする機会が増えることが期待できます。
パソコンは指先を通じて大脳を刺激し、脳血流量を増やすと同時に、読み書き、文字や文案の作業によって言語能力の衰えを防ぎます。
釣りには釣果の満足感と達成感があり、大物を釣り上げたりすると仲間からの賞賛も得られます。チームスポーツで仲間とコミュニケーションするのと同じような効果が期待できるようです。
*1/*2【参照論文】「高齢者の趣味の種類および数と認知症発症:JAGES6年縦断研究」辻大士、他
好きなことに打ち込む心は豊かで、その姿は若々しい
一人で取り組める室内の趣味として、読書、パソコン、絵画、書道、楽器演奏、詩歌、手工芸などがあります。囲碁の定石や将棋の定跡も一人で研究可能です。一人ならマイペースで好きな時間にたしなめるというメリットがあります。
しかし、グループとして活動できる趣味なら、時には仲間と一緒に楽しむ時間があってもいいでしょう。本の感想を話す、パソコンの技を教え合う、囲碁や将棋で対戦する、絵や書や俳句や短歌を披露し合うなど、コミュニケーションも弾みます。趣味と人間関係が融合すると、張り合いが生まれ心の支えをいっそう強く感じるようになります。
サービス付き高齢者向け住宅は集合住宅。せっかくそこに居を構えるのなら、共に活動できる機会を増やしたいものです。シニアの皆さんが同じ志をもって趣味に打ち込む姿はとても若々しく、充実感が漲っているように見えます。
グランドマストでは積極的に趣味をおすすめし、サークル活動を応援しています。人気のある趣味はゲーム(トランプ、麻雀、囲碁、将棋)、映画鑑賞、体操・散歩、カラオケなどです。
以前からやっている趣味、たとえばコーラスやダンスなどは自分一人しかいないという場合、コミュニティのカルチャーセンターの講座やサークルを紹介します。ほとんどのグランドマストは文化活動の施設に近い立地にあるので、遠出をしなくても趣味を楽しむことができます。
【グランドマストの事例紹介】
イス体操(グランドマスト全物件)
屋上庭園(グランドマスト古河庭園)
麻雀
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ジャム作り
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