人生の豊かさや幸せを考えるとき、それを支えるものとして身体が健康であることはもちろん大切ですが、「自分の尊厳が守られる」というのも身体の健康と同じか、それ以上に大切なことではないでしょうか。
「尊厳」ということばはやや堅苦しく響きますが、「自分のことを自分で決められる」ということです。当たり前のように聞こえますが、高齢期になってくるとこの当たり前のことがままならないのが今の日本です。
「こんなはずじゃなかった!」とのちのちに後悔しないように、「尊厳が保たれる暮らし」を維持し続けるための「みちしるべ」になるお話をしたいと思います。
目次
「尊厳」とは自分の人生を自分で決めること
「自分のことを自分で決められない」とは? どんな状況や場面でそうなるのか、少し思い浮かべてみたいと思います。
最初にみなさんの頭をよぎるのは、「認知症になったとき」や「意識を失ったとき」ではないでしょうか? あとは他界後です。亡くなってしまうと自分のことは自分で決められません。当たり前ですが……。
今では、認知症になった時にあらかじめ自分の意思を「任意後見」として意思表示できます。また、尊厳死を尊重する世の中の流れを受けて〈リビングウィル*〉が一定の効果を持つようになりました。他界後も自分の意思を反映させるための、遺言や死後事務委任など、さまざまな制度が整備されてきました。
*リビングウィルとは、尊厳死の権利主張や延命治療の打ち切りを希望することなどの「生前の意思」の意味。
これらの仕組みの多くは、2000年の介護保険制度導入から急速に整備されてきました。その背景には「尊厳」や「人権」を守るという大きな社会の流れがあります。
裏返して言えば、「それまでの社会は尊厳や人権に対して鈍感だった」と言い換えることもできます。
なぜかと言うと、介護保険制度導入前は「措置」と呼ばれる、「行政が強制的に、支援内容を決定する」ものだったため、「選択する」とか「自分で選ぶ」ということが許されておらず、許されるようになってからはたかだか20年ということが背景にあります。
1本の「鍵」が象徴する自由
介護施設を選ぶときの条件は、とにもかくにも「介護(世話)をきちんとしてくれること」です。また、「費用」や「立地」などに重きを置いて選ぶことも多くなります。特に「退院後すぐに施設へ!」という場面もあるので、選んでいる時間的な余裕もあまりなく、事前に細かい事柄をチェックしたり把握したりすることが難しくなりがちです。
入居してはじめて、「自分の部屋に鍵がかけられない」「音がうるさい」「夜更かしや寝坊ができない」「外出できない」「出前が取れない」などということが分かり、完全管理のもとで生活を営めるという期待が裏切られ、「こんなはずじゃなかった……」と愕然としてしまうのが現実です。
介護施設の「自立でも入居可」という話を鵜吞みにして入居した人がいます。入居後まもなく、まわりの人たちが介護度も重くコミュニケーションが難しいことを知りました。自分一人が孤立してしまい、散歩もできず、好きなものも食べられない状況にいたたまれなくなりました。「こういう場所はわたしの場所じゃない」との思いが強くなり、わずか半年で介護施設を退去して、自力で探したグランドマストに引っ越しされたのでした。
平成28年の調査ですが、自室の鍵の管理についての驚くべき調査結果があります。
介護付き有料老人ホームの場合、「居室の鍵の管理を本人に任せている」と回答しているのは約1,500件のうちわずか10%程度にすぎません。サービス付き高齢者向け住宅においても40%に満たない状況です。
なぜこういう結果になっているのでしょうか?
本来介護は、生活のすべてではなく、一部であるにもかかわらず、それがあたかも他の何よりも最優先されるべきと考えられ、その結果、「安全」と「管理」が極端に重要視されるからです。職員が速やかに居室に出入りできたり、認知症になっても出入りできることが安全と管理につながると考えられがちです。逆に、居室に施錠するのは「身体拘束にあたる」という意見が大半を占め、現在私たちが営んでいる暮らしぶりと施設の考え方が大きく異なっていることを痛感します。
いつでも浴室とキッチンが使える自由の基本
介護施設の設備の状況についてのデータがあります。ここでは特に浴室とキッチンの現状を見ることにします。
住宅型有料老人ホームで居室内に浴室が設置されているのはわずか10.5%です。介護付き有料老人ホームでも15.6%、サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)においても26.0%にとどまっています。
居室内にキッチンが設置されているのは、介護付き有料老人ホームでは17.1%、住宅型有料老人ホームでは14.8%にとどまっていますが、他方、サービス付き高齢者向け住宅(非特定施設)では42.6%となっています。
自分の住む居室に浴室とキッチンがあり、散歩から帰ってシャワーを浴び、部屋で軽食を作るのは当たり前と考えがちですが、実際はそうではないのです。
浴室とキッチンが自由に使える自立性と尊厳性。グランドマストでは全ての居室に浴室とキッチンを完備しています。いずれも、積水ハウスグループが長年の戸建住宅で培ってきたノウハウが生かされた、細やかな気配りを細部にまで反映した先進の設備。機能性はもちろんのこと、デザインや使いやすさにもこだわり、日々の暮らしやすさを高める居住性能を実現しています。
グランドマストで自分の意思で時間が使える幸せを
施設にもわが家にもいろいろな状況があり、そうした状況に応じて暮らしのカタチも変わります。便利も不便もあり、満足も不満もあり、そして自由と窮屈もあるでしょう。
それでもなお、これまでの考察から検証すべきことが浮かび上がってきました。生活の中で自分の意思で自分の思いが自分のペースで叶えられるか? たとえばそれは鍵を持つことであり、自室の風呂に入ることであり、好きな食材を料理して自食することであり、ひいては時間の使い方や暮らし方の融通がきくことです。
今回の「みちしるべ」では、尊厳という視点から高齢者の理想の暮らし方を探ってみました。尊厳のある暮らしを施設で実現するには条件が厳しいこと、他方、わが家のほうが尊厳のある暮らしが実現しやすいことが見えてきました。『グランドマスト』はそんなわが家の一つの理想です。
グランドマストの平均的な居住者の人たちは、これまで述べてきた尊厳のためのごく当たり前のことを享受されています。
● 自由な外出
● 高級マンションさながらの設備
● 好きなときに使える浴室
● 料理好きにもうれしいキッチン
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