「グランドマスト」 美味しい食事の秘訣とは

「専任調理人」が食材を選定し現地で調理
プロならではの工夫盛り込み、出来立てを提供

食事が決め手となって入居する人も多いという「グランドマスト」。積水ハウスグループの高齢者向け賃貸マンション(サービス付き高齢者向け住宅)で、関西を含め全39棟展開されている。料理が億劫になってきた、配偶者に先立たれ一人分は…などの理由で、自炊から卒業したいと考えている人は多いもの。そんな声に応えるグランドマストは、美味しい自前の食事を提供し(選択制・有料)、入居者の支持を集めている。その美味しさの秘訣とは…

「グランドマスト赤堤」で話を聞いた。「赤堤は特に(食堂での)喫食率が高い。8月は85%の方が利用されました」と㈱馬渕商事の山口大作さんは話す。60年近い食事提供サービスの実績を誇る同社は、グランドマストで食事を提供し、入居者の〝胃袋〟をつかんでいる。

調理人 福田匤史さん

調理人 福田匤史さん

「体調や歯の調子によって、おかゆにしてという方もいらっしゃいます。対応できることは対応しています。入居者様にとって食堂はここしかないので、来てもらって美味しく食べてもらうためにどうしたらいいかと常に考えています」

〇薄味でも美味しく

外出・外食などの制限がなく自由に暮らすことができ、自室に立派なキッチンがある同物件で喫食率が高いのは、美味しいから、にほかならない。調理を担当するのは和会席料理で腕を磨いた福田匡史さん。シニア向けの食事について、「塩分を控えるため味付けを薄くすることと、食材を柔らかくしたり、小さめに切ったりを意識しています」
 「塩分を抑えて美味しいと言わせるのは難しいんですよ」と山口さん。その中で福田さんの料理はすごく評判がいい。その秘訣は? 「出汁を強くすることで塩分を抑えても食べていただけるようになります。あとは全体のバランスですね。干物にしろおしんこにしろ、どうしても濃くなる味付けのものがある場合、汁物や副菜などで調整しています」
 その結果、「入居者様に健康診断の数値が良くなったと喜ばれました」。「ちゃんとした食事をしてないとこういう数値は出てこない」と医師に言われたと、入居者の家族からも感謝されたという。

〇厨房を併設

グランドマストで提供する食事の特長は、併設の厨房で専任の調理人が手掛けていること。地元野菜など新鮮な食材を買い出しに行き、出来立てを提供している。ご飯をよそう際は、入居者の好みの量を覚えていて対応。食事後は、「いつも食べている方が残していたら、体調がすぐれないのかなと気にしますね。フロントスタッフに言っておくと、ご家族に伝えてくれますので、最近食が落ちてきたなという場合も伝えています」(福田さん)。

〇主菜は肉と魚

献立を考えている管理栄養士の野苅家敦子さんはこう話す。「夕食は主菜を肉と魚の2品にし、魚が苦手な人はお肉でたんぱく質を摂れるようにしています。最近よく聞くフレイル(健康と要介護の間の虚弱状態)予防として、朝夕2食で、だいたい1日に必要なたんぱく質が賄えるようにしています」。福田さんも「塩分コントロールを続けることは難しいですから、グランドマストで健康長寿を目指してくれたらうれしいですね」

調理人 福田匤史さん

この日の主菜は鯖の白だし焼きと筑前煮

(定年時代2023年11月上旬号 掲載)

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